伝説の時代から現代まで 航空史抜き書き

航空歴史館

 

パイパーL-21B JA3272の思い出


撮影 にがうり
 
  大石直昭

追加投稿目次

感想1 ハスキーのために一言 HSC-M 05/06/12
感想2 何を評価するかということ 大石直昭  05/06/15
感想3 ハスキーについて弁解 HSC-M 05/06/17
 感想4 グライダーの話題に寄せて 伊藤憲一 05/06/18

 

 
 はじめまして 横浜の大石直昭と申します

 陸上自衛隊のL-21Bですが、払い下げ最後の生き残りJA3272は、昨年11月まで千葉県関宿滑空場で曳航機として飛行していました。ともかく、機齢50年を数えることができました。

 その間数度オーバーホール、大修理を重ねております。私もこの機体で約300時間、2000回ほど飛行していますが、操縦しやすく素直な機体です。

 いまは分解して、関宿滑空場のコンテナーに入れてあるとのことです。

 

     野田空まつり2004で最後の飛行 JA3272 2004/12/19 野田空まつり2004 撮影 ogurenko


パイパーL-21B (民間名称PA-18-135) JA3272の経歴 作成:佐伯邦昭

1951 製造番号18-2756 米陸軍シリアル53-3756
1953 保安隊へ供与 全62機 
1953 陸上自衛隊へ移行後 シリアルJG12016となる
1966/06/24  日本赤十字社へ払い下げ 全14機 日赤航空隊編成 本機はJA3272となる 
  以後 個人所有変遷 定置場も龍ヶ崎、大利根、関宿など
2003 関宿滑空場名義となる
2004/12 JA3272抹消登録


 


本機にまつわる思い出:

 この機体を曳航機として関宿で運用を始めたのは、たしか1981年ごろだと思います。その頃わたくしはまだ駆け出しのグライダーパイロットでしたが、何でも飛びたい盛りで、「黄色い飛行機も良さそう」と、飛行機のライセンスを米国チノ飛行場で取得しました。

 一般の小型機はノーズ車輪式がほとんどですが、それは地上滑走、離着陸がずっと容易だからです。米国などで誰でも飛行機のライセンスが取れるのは、そのためです。

1999年関宿で 筆者撮影


 L-21Bも含め、「尾輪式」の車輪配置では根本的に滑走中の方向安定がなく、滑走中に少しでも注意を怠ると針路がはずれ、悪くすると「グラウンドループ」といって、飛行機全体が水平にくるりと廻されてしまいます。悪くすると主翼も接地してしまいます。尾輪式機が壊れてしまう大半の原因はこれによります。これが普通の人とを分ける「関門」です。

 現在日本で尾輪式ヒコーキを運転できるのは、合わせても50人くらいでしょうか。航空局の試験官には1名もおりません。

 ということで、特に着陸では、接地の際に「バウンド」せずにぴたりと降ろすことができるまで、相当練習しました。たぶん着陸は500回ぐらい訓練したと思います。また横風にも相当神経を使いました。

 関宿滑空場は、雨のあとは路面が軟弱になりがちなので、低圧タイヤ+プロペラと地面の間隔が確保できる本機は非常に重宝します。

 いったん上空に上がってしまえば、3舵のバランスが非常に良い、思い通りになる機体です。たしかにパイロットフレンドリーですが、エンジンが150馬力と小さいので、「お仕事」すなわち重たいグライダーの曳航には苦労しました。

 操縦席のイスはとても小さいのですが、人間工学的に良くできた設計で、ほとんどの体型のパイロットに適合し、好評でした。操縦桿(スティック)のポジションも良く、今私が飛ばしている「ハスキー」とは天と地の違いです。ヒーターも良く効きます。

1999年関宿で 筆者撮影



 関宿は冬季になると風が強く、そのために「ひっくり返る」ことが起こっていますが、米国ではいまでもサードパーティから正式部品が供給されているので、修理運用は問題ありません。ただし、PA-18ではなくL-21なので、後部キャノピーの形状が独特です。

 私のアマチュアパイロットの修行のほとんどはこの機体ででした。グライダー、飛行機と合わせてこれまで50機種以上操縦していますが、もっとも印象に残る機体の一つです。忘れられません。下の写真は1999年冬関宿、1999年3月ごろ、群馬県板倉滑空場に私が操縦、出張した際に撮影したものです。

 

1998年3月板倉で筆者撮影





 PS Tiger-02の写真は、英国ケントにある「Tiger AHub」でデハビランド・タイガーモスの操縦訓練をしたときのものです。2000年6月でした。



 

感想 

      感想1 ハスキーのために一言 HSC-M

 
 大石直昭さんの「パイパーL-21B JA3272の思い出」は、大変興味深く読ませていただきましたが、ただ一箇所、知らない方のために言い訳させていただきたい部分があります。

 「操縦桿(スティック)のポジションも良く、今私が飛ばしている「ハスキー」とは天と地の違いです。」

 の部分です。これでは、ハスキーが可哀相です。そこで、(社)日本航空機操縦士協会PILOT誌May2001,P46の記事の一部を紹介させていただきます。

私のハスキー感

 現在、国内において、ハスキーと同様な性格の尾輪式、羽布張りの機体としては、スーパーカブと、シタブリアが存在する。昨年以降、私自身、それらの機体に、入れ替わり立ち代わりといった感じで乗る機会があった。それぞれに異なる性格はあるものの、皆、とても良い機体であった。
あえてこの3機を操縦の面から表現するならば、スーパーカブは性格温厚な優等生。シタブリアは可愛い元気者。ハスキーは、その両方に、多少の緊張感が必要といったところであろうかと思う。その緊張感を楽しさと考えることができれば、ハスキーは最良の友となるであろう。
ハスキーは新しい設計であるだけに、操縦席回りに必要な機器等が全て合理的に配置され、座っただけで、その洗練度と快適さを感じる。・・・

 参考までに、ハスキーA-1、スーパーカブPA-18-125及びシタブリアの写真を並べてみました。似ているようでも、皆、それぞれの性格があり、興味深いものです。
 私の場合は、それぞれの機体を味わい、楽しむようにしていますので、どの機体も好きです。
 

Chisten Industries A-1 HUSKY

 

Piper PA-18-150 SUPER CUB
 
Bellanca 7GCBC CITABRIA

の感想

感想2  何を評価するかということ 大石直昭

 
 HSC-Mさんの感想文をいただきまして、反応があることをうれしく感じています。ただ、水かけ論争になることは好みませんが、差し支えなければ、以下の文章を発表させていただきたいと存じます。


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 あのPILOT誌の内容をそのまま持ってくるのは、実際に運航している立場からすれば、「外見だけ見ている」ということになります。

 説明不足でしたが、あの「ハスキー」の操縦席の座席は何と固定式で、平均体型の日本人のうち、およそ1/3の人は、そのままではラダーペダルに足が届かず、背中にクッションを入れて腰を前に出そうとすると、今度は操縦桿が手前いっぱいまで引けず(尾輪式では致命的)、そうなるとフラップレバーもいっぱいには引きにくく、これらの点が「スーパーカブ」とは大違いなのです。

 うちのクラブにも日本を代表するアマチュアパイロットがいますが(女性)、体が小さいので上記が障害となり、本機では飛んでいません。

 私自身は身長180cm、体重90キロですので問題はありませんが、それでも後席で操縦する場合、ラダーペダルにやっと足が届く程度です。

 飛ぶ人の間では、航空機の評価はこのような点が重視されます。グライダー曳航では1日に30回くらいも離着陸する関係上、上記のようなことは、ボディブローのように疲労としてのしかかってきます。

 また、着陸時に引き起こす際、昇降舵の効きがわずかに不足で、そのため3点姿勢まで引き起こしにくいのも、スーパーカブと比べての評価を下げる点になっています。

 カブの、あのちゃっちい小さな前部座席ですが、位置調節も利き、長時間座っても疲れず、絶妙です。

 ただし、ハスキーのエンジン馬力は強く、プロペラも定速式であり、「仕事」をするのにはおおいに役立っています。パイパー・スーパーカブはパイロットフレンドリーすぎるかな、と現在では思っています。

 どうも、航空機の操縦性や乗り心地にこだわったといわれる旧日本軍パイロットと、「乗れ」といわれたものには文句を言わずに乗っていたという米軍パイロットとの比較の構図という感じもしますが・・・。

 

3

感想3  ハスキーのために弁解 HSC-M

 
 先輩とはいえ、大石直昭様に
「あのPILOT誌の内容をそのまま持ってくるのは、実際に運航している立場からすれば、外見だけ見ている、ということになります。」
とまで言われてしまったのでは、またまた弁解をしなければなりません。

 「あのPILOT誌の内容」とは、自分が書いたものを、そのまま持ってきたまでです。その年、ハスキー、カブ、シタブリアを合せての着陸回数は、年間で600回と少々でしたから、大先輩の大石様からみればの足元にも及ばないヒヨコなのでしょうが、言っていることは正直な感想です。

 私は身長166.5cm、典型的な胴長短足オジンです。大石様は「ハスキーの操縦席の座席は何と固定式で、平均体型の日本人のうち、およそ1/3の人は、そのままではラダーペダルに足が届かず・・」と言われていますが、身長166.5cmでも、背中のクッション無しでハスキーを飛ばしています。確かに5cm程度のクッションを入れた方が楽ですが、無しでもどうということはありません。

 「グライダー曳航では1日に30回くらいも離着陸する」との部分は、同じ経験がありますので、お気持ちはよくわかります。

 「また、(ハスキーは)着陸時に引き起こす際、昇降舵の効きがわずかに不足で、そのため3点姿勢まで引き起こしにくいのも、スーパーカブと比べての評価を下げる点になっています。」・・とありますが、その点は全く同感です。そこで「ハスキーは多少の緊張感が必要」となったものです。特に舗装滑走路では緊張します。
 カブは、とにかく飛ばすのが気持ちよくて楽で、それが「性格温厚な優等生」との表現になりました。

 とはいえ、180HPカブの、フラップフルダウン時のトリム変化は、あまりほめられたものではありません。それから、カブでは、スイッチやら何やらが、天井部や腰の横や、あちこちに付いていて慣れればどうと言うことはありませんが、ここはハスキーの勝ち。ブレーキも、カブのはこれまた慣れればどうと言うことはないとしても、かかと操作する特殊なものです。ハスキーのは、セスナ、ビーチ、シタブリア、FA200等々でおなじみの、ラダーペダルの上部に一体になったものです。

 カブには、そのような特殊な部分が多々あるのですが、それでも、乗っていて楽といった不思議な機体です。バランスが良いのでしょう。そこのところは良くわかります。

 楽と言えば、一番楽なのはシタブリアかもしれません。ハスキーとは逆に3点接地姿勢でもエレベータの効きは余裕タップリで着陸は楽ですし、総じて舵の効きが元気良く、気持ちの良い機体です。

 以上合せて「スーパーカブは性格温厚な優等生。シタブリアは可愛い元気者。ハスキーは、その両方に、多少の緊張感が必要といったところであろうか」となりました。
 この気持ちは今でも変りありません。 以上弁解でした。

 

4

感想4  グライダーの話題に寄せて 伊藤憲一

 
 ここ数日のグライダー曳航機、索などに関する話題、楽しく見させていただいています。JA3272スーパーカブの写真を、過去に一度だけ撮影する機会がありました。参考まで、他の写真も含め5枚、お送りします。


JA3272 (1986年4月5日、関宿滑空場)



 
 JA3191・モランソルニエMS885 (1986年4月5日、関宿滑空場) ・・・この機種は日本では珍しいのではないでしょうか。

 
 JA4087・パイパーPA−18−150 (2003年8月10日、霞目駐屯地) ・・・この機は、ここ1年ほど霞目では見られなくなりました。

 
ところで、これらの話題に関して、私が聞いた話、その他を、何点か書いておきます。

1、1980年代の初期ごろ、当時勤めていた会社の職場と東北大学の、ある研究室との何かの交流会で、たまたま出席者に東北大グライダー部員がおり、その人の話。全くのしろうとの私にとっては、面白く、また、驚きの感覚を持って聞いた話です。

 (1) ウィンチ曳航時の索断について、「たまに、あるんですよ。」と、こともなげに言っていたことにびっくり。その時の対策は、しっかりあるのでしょう。その当時と今の索の材質、太さ、強度などの違いはわかりませんが。

 (2) 霞目上空は(実際はもっと広範囲なのでしょうが)日本で3指に入る強い上昇する気流が発生する所。特に、冬は、蔵王山に当たった強い西風が、下流で大きく上下に波打ちし、(ウェーブと言っていました)上向きの波に乗れるとかなりの高度が獲れるそうです。
   (参考:蔵王山の主峰・熊野岳(1841m)から霞目への方位は、東北東(磁方位80度ぐらい)で、距離約45km)
   
 (3)静かな日は地上の音がよく聞こえるそうです。(鶏の鳴き声等も!) このような時は、列車の操車場や、焚き火をしている上空へ行き、上昇気流を探すそうです。

 

2、今年4月の霞目駐屯地祭で

 (1) 東北大学で昨年ごろまで使用していた、日本で唯一のWSKスイドニクSZD−30(JA2225)が除籍になり、大阪府の博物館(詳細な名称は聞きそびれてしまいました)に展示されたそうです。(展示グライダーの説明をしていた東北大学の部員から)。
 別にもう1機、これも唯一の機体の、グライダー部自ら設計した、東北大キュムラス(JA2101。1970年8月登録)がありますが、こちらは、今も、元気に飛んでいるそうです。    

 (2) 展示されていた仙台グライダークラブの現在の曳航機のモールエア式M7−235C(JA30HT)の操縦席に乗せてもらったのですが、尾輪式で、前部の窓を通して空しか見えません。よくこれで離着陸ができるものだと感心しますね。
    
 
 

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