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 グライダーの部屋 G-7 掲載08/03/23
追加10/07/12
 

 

グライダーのヨーストリンガーなどの計器

 ピッチストリングについて

                                    中国航空協会 古谷眞之助

 グライダー界では、ピッチストリングについてはすでに50年前から提唱されており、特に新しいものではないようですが、わが国ではそれほどポピュラーではなく、ぼつぼつ利用され始めたというところでしょうか。

 ヨーストリングが機体の滑りの状況把握に使用されるのに対して、ピッチストリングは迎角の変化の把握に用いられています。注意すべきは迎角そのものを指示しているものではないということです。

 ウィンチ曳航の場合は、特に失速速度が安全上重要であり、それの把握に有効と考えられています。
 ヨーストリングが機体の中心線にセットされるのに対して、サイドヨーストリングは、キャノピーの側面のどちらか見やすい方にセットされています。



 あらかじめ、それぞれの速度で毛糸がどの角度を示すかを計測し、それをキャノピーの内側に目盛りを入れておきます。
 グライダーパイロットが速度に関して知りたいのは、
 @失速速度
 A最良滑空速度
 B最小沈下速度
の三つと言って良いでしょう。最低限この三つの速度の場合、ピッチストリングがどの位置を示すかを表示しておけば十分だと思います。これらの速度は、それぞれの機体の性能表から分かっていますから、もちろん速度計を見れば現在状況は把握できるわけですが、あくまでヘッドアップディスプレイとしてのピッチストリングに意味があります。

 @はそれ以下であれば失速してしまう速度ですから当然重要です。Aは長距離飛行時にはこの速度で飛べば最も距離が伸びる速度ですので、クロスカントリーをする際には特に重要です。Bは如何に長く滞空するかという状況下で効力を発揮します。

 滑りをヨーストリングで、迎角の状況をピッチストリングで、把握できれば、極論すれば、旋回計、速度計を見る必要がなくなります。ただし、ピッチストリングがセットされた機体の写真を見ると、両方見ていたら混乱するだろうなぁ、と正直なところ、私には思えます。わがクラブには新しものの好きな御仁がいますから、いずれ実際に使用してみてリポートすることにしましょう。

 

(注)JSA Infomation #291の特集記事でサイドヨーストリングという単語を用いていますが、その機能を考慮すれば、サイドヨーストリングとよりもピッチストリングの方が適当と考えます。

 

航空歴史館総目次R109 ジェット戦闘(練習)機のヨー ストリンガー記事に関連して

                                    中国航空協会 古谷眞之助

 F4T-33のヨーストリンガーも機体の「滑り」を知るためにあるのでしょうが、戦闘機の場合、高機動を行うために意図的に機体を滑らすこともあるかと思います。確か後方に食らいつかれた場合など、機体を滑らせて弾丸を回避する方法を取る、のではなかったでしょうか。

 一方、グライダーの場合、基本的にどんな時も滑らせてはだめです。パワーのないグライダーにとって滑空性能を最大限に引き出すためには、常にグライダーを大気に対してまっすぐに向けておくことが必要です。その時、気流は翼の上下を理想的に流れて最大の揚力を生むからです。そして、機体が大気に対して正対しているかどうかを示してくれるのがヨースリンガーです。ですから、ストリンガー(ちょっと下品ですが、単に「ヒモ」ともいいます)が、パイロットから見て、常にまっすぐ後方に伸びるように、飛行中にラダーペダルやステックを使って方位やバンク角を修正していきます。

 慣れたグライダーパイロットは上空を飛ぶ時に計器に注視することはなく、ちらっと見るだけで、高度は目分量で、速度は機体から発せられる風切り音で判断します。そして滑りの状況をこのストリンガーで知って修正していきます。計器を見続けること(ルックダウン)は、グライダー競技会のように一時期、あちこちに機体が飛んでいる場合には大変危険ですので、ヘッドアップディスプレイとも言える、このストリンガーは大切な計器と言えます。

 例えば、グライダーは通常サーマル(熱上昇風)の中をトンビのように旋回しながら上昇しますが、この時、機体を滑らすと、てきめんに上昇率が悪くなります。滑る要因は、パイロットの操作に起因するものや、複雑に変化する風に起因する場合もあります。そういう場合、ヨーストリンガーがまっすぐ後方に伸びるように、バンク角を修正したりラダーを踏み込んでやれば上昇率は格段に回復します。つまり、翼が本来の能力をフルに発揮してくれるのです。

 ところで、グライダーでも意図的に機体を滑らす時があります。フォワードスリップ、スリッピングターンと呼ばれる操作方法で、いずれも着陸時に余分な高度処理のために使われます。この時、ラダーとスティックはクロスコントロール(通常とは逆操作。例えば右ラダーを踏み、スティックを左に倒す)します。この操作によって翼は揚力を減衰し、高度が一気に落ちるわけです。私自身は、この操作中には生理的な嫌悪感を持つので好きではありません。パワーの機体がこのような操作をすることがあるのかどうか、多分ないのではないかと思います。

 グライダー関係書籍ではおしなべて「ヨーストリンガーはグライダーにとっては最も大切な計器と言える」とありますが、グライダーの場合、速度は時速70250くらいですので、実は単に通常の毛糸をビニールテープでキャノピーに固定しているだけのものです。

 

アレキサンダー シュライハー ASW-20AHの計器 解説 古谷眞之助

撮影2008/02 防府市 廣政和男


 

@ ヨーストリンガー

 ヒモとも言います。適当な毛糸を準備して、端をテープで止めます。機能は、ボールゲージ同様に「機体の滑り」をルックダウンすることなく感知できる便利なものです。基本的に前方を注視していますから、滑り修正は、こちらを利用した方が安全です。なにせヘッドアップですから。

 ちなみにグライダー以外でも飛行中の「滑り」は禁物でしょうが、グライダーの場合、機体を滑らせると効率よく上昇できません。バンク角とラダー使用量を調整してこのヒモが常に機体に対して真正面にくるように操縦します。また極端な滑りは失速の危険を伴いますから、単なるヒモとはいえ、重要な計器と言えます。上昇中のグライダーは失速速度ギリギリで飛んでいます。

A コンパス


B
 速度計 

 100km/hの対気速度で飛んでいることを示しています。黄色の▲印がありますが、これは着陸時の推奨進入速度を示しています。これは世界的ルールで、海外でもこのように示されます。

 海外ではノット表示ですが、国内のグライダーは、なぜかキロメートル表示のものが多く使用されています。

 

 

 


C 昇降計(バリオメーター) 

 マイナス2付近を示していますが、これは現在機体が毎秒2bの速度で降下していることを示しています。通常、直線飛行を続ければ機体はゆっくり「滑り落ちて」いきます。

 高度を稼ぐ場合は、上昇風帯の中をトンビのように旋回しながら上昇していきます。旋回するのは、狭い上昇風の中にとどまり続けるためです。この時、この計器はプラス側に振れます。もちろん、絶好の気象条件(例えばクラウドストリート)であれば、直線飛行でも上昇していくことができますが、非常に希です。Winterとは計器メーカー名です

D ベンチレーター

 外気を導入するベンチレーターの表示が四角の白。丸いボタン状のものを引っ張ることで、外気導入ができます。機内と機外温度差が大きくなるとキャノピーが曇ります。そう言う場合は曇りとりになりますし、夏、少しでも涼しい外気を取り入れることで、快適になります。

 

 

  グライダーの計器としては、他に高度計が加わります。基本は、速度、昇降、高度、コンパスの4つで、機体によってはボールゲージ(機体の滑りを表す)、無線関係、トランスポンダ、フライトコンピュータ、GPSなどを追加装備しています。


Scheibe SF28A JA2562 モーターグライダーのヨーストリンガー  ハービー

撮影2005 北海道滝川  ハービー


パイロットは元陸自帯広でAH-1飛行隊長をしていた池田亨さん 池田さんは2007年にグライダーで鹿児島県枕崎飛行場から滝川まで日本縦断をされました。