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航空歴史館掲載12/10/08
 

 

優秀なエンジンではあったが、結局一代限りの星形水冷エンジン サルムソンZ-9



 フォール教育団がもたらした機体のうちで、地味ながらもっとも長く使われ、非常な功績を残したものがサルムソン偵察機である。本機をそのように傑作機たらしめたものは、まず第一に発動機が信頼性にとんでいたこと、第二に、機体そのものが非常に安定がよくて操縦が楽だったことである 今川一策

                                       (1962年酣燈社刊 回想の日本陸軍機)

と,、このように言われたサルムソン偵察機のエンジンは、9気筒の水冷星形エンジンです。通常の星形エンジンは、前方から空気を採り入れて、導風板でシリンダーに冷気が当たるようにするいわゆる空冷式ですから、これは非常に珍しいものと言えます。

 しかし、信頼性にとんでいたこの優秀なエンジンが二世、三世と引き継がれて星形エンジンの世界に一定の地歩を築いたかというと、そうではありません。

 原因は、基本的には空冷なのに、それをわざわざ水で冷却するための二重の構造を設けなければならないかというコストアップの問題、もしくは、水冷却そのものが必要ないということかと思われます。

 そこで、サルムソンZ-9水冷星形エンジンの構造がどのようなものであったか、少々調べてみました。(小山、茶谷、須賀の皆さんのアドバイスを頂きました。)

 

第1図 国立科学博物館にあるサルムソンZ-9エンジン 撮影小山澄人

 シリンダー部分と外枠だけが残っており、残念ながら水冷部分がありません。外枠は集合排気管パイプで、ガスは突起状の排気管(左右にあり)から排出されます。 



第2図 乙式一型偵察機の発動機取付準備  提供かかみがはら航空宇宙科学博物館

        第3図 上の拡大 上がエンジン本体、下左がシャッタ―、下右が蜂の巣状のラジエーター 
        

 第4図 構造
 第5図 外観
 

 ラジエーターの上に突起があり、一部の外国資料に「Hot Water from radiator」と記しているものがあり、熱水か蒸気が上がってくる装置のようにも取れますが、よく分りません。

  また、シャッターで空気を調節するというのが意味がよく分りません。ソ連機のように過冷却を防ぐためなのでしょうか。

 いずれにしても、第4図を見れば、シリンダー周りの配管など構造がかなり複雑になりそうであり、冷却効果に対して製造や整備のコストが引き合うのかどうか疑問です。サルムソン以後、この形式が全く普及しなかった理由がわかります。

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