伝説の時代から現代まで 航空史抜き書き

航空歴史館 掲載08/02/24
追加08/03/06
      

 

零式艦上戦闘機21型に関する質問

西岡

ダグラスDC-3のエンジンスタート手順とコックピット解説
(零戦とは直接関連はありませんが、栄と似たようなエンジンの始動ということで)

 

 

 初めまして、突然のメールで失礼致します。Flight Gear というオープンソースのフライトシミュレータ及びシミュレータ向けの機体開発を行っている西岡と申します。以前より Flight Gear 向けに A6M2 の開発を行っているのですが、判らない所が数点あります。

1  混合比計について

 21型には混合比計がついていたのですが、この計器の目盛がどのようになっているのかが判りません。

 「零戦秘録」の取扱説明書を見る限り混合比の数値が書かれていると思うのですが、計器の詳細や目盛の間隔、また記述されている数値などについてご存知であればご教授願います。
 #
現在は仕方が無くA6M3 用の排気温計を付けています。

  

2  プロペラピッチとエンジン出力(調速機)の関係について

 21型のプロペラピッチはマニュアルで操作するようですが、プロペラガバナーが具体的にどのようにピッチ調整を行っているのかと、回転数の調整方法が判りません。

 推測するに、ピッチレバーを上げると最大ピッチ角が大きくなるとともに、回転数が少し下がり、定速にするためガバナーがスロットルを操作し、吸気圧を上げ回転数を戻そうとするという感じでしょうか?

 ただ、回転数を具体的にどのようにセットし、どのようにして変更するのかが判りません。設定する際は、あらかじめスロットルで調整してからピッチレバーを動かせばいい気もしますが、回転数を変更するには、ピッチを固定に戻してから回転を調整し再びピッチレバーで操作するか、強引にスロットルを off にして再び on にして回転を下げるというような操作になるのでしょうか?

 ネットで検索すると、このような記事が見つかりました。
 http://www.spy.ne.jp/~ka-z/5thafk/shiryou/ririku.htm

 

 これによると、ピッチレバー操作後にスロットルで 1850rpm に調整とあります。しかし、定速状態だと回転数より先にピッチが最低の25度に戻ってしまう気がします。

 また、高速時は低ピッチにするとありますが、280kt を低ピッチで出すのでしょうか?謎が深まるばかりです。判らない事だらけですが、ご教授願えたら幸いです。

 

 いずれにしてもシミュレータ上のA6M2 を少しずつ実機に近づけられたらと思います。なお、Flight Gear はオープンソースなフリーソフトウェアですので、どなたでも利用できます。

A6M2 を始め幾つかの大戦機を作成しました。まだ全然実機に近づいていませんが、それとなく雰囲気は感じられるかと思います。機会があれば是非お試しください。

 FlightGear メインサイト(英語) : http://www.flightgear.org

FlightGear日本語サイト : http://www.jp.flightgear.org

 


2008/02/25  混合比計について回答  かつおさんから
 

 昭和63年12月発行モデルアート増刊「図解零式艦上戦闘機11・21型」に混合比計が出ています。

2008/02/27  混合比計について回答  にがうりさんから

 モデルアート 平成16年4月号臨時増刊号No.655 日本海軍航空隊軍装と装備に零戦混合比計の図が載っています。

追加

2008/03/06 ダグラスDC-3のエンジンスタート手順とコックピット解説

日本のダグラスDC-3 技術篇(2002年5月以来休止中)から転記

 

 さあ エンジンスタート 協力:にがうり

 
 
大分空港 撮影1961夏  門上俊夫

 写真は、既にbQ(右)エンジンが始動し、続いてbP(左)エンジンの始動にとりかかったところである。
 地上には、左手の指を1本突き出し、右腕を回している誘導職員、消火器を構えている職員、車輪止めをはずす合図を待っている職員が居る。気候のいい時はのどかに見えるスタート風景だが、暑さ寒さや風雨の時の地上要員、特に排気管付近に待機する消火マンの仕事はつらかったという。当然ながら新人の仕事だったからその記憶はいつまでも消えないだろう。

 だからといって操縦席のパイロットの仕事が楽だというわけではないのだ。

@ 外部点検

 機長が搭乗口から左主翼へ向かい、機体を反時計回りに一周しながら各部のチェックをして歩く姿は常に同じである。米軍C-47のチェックリストを見ると機外だけで約60項目の点検が必要である。全日空も同じであろう。動翼やプロペラの固着、ひっかかリ、異音など経験がものをいう箇所もあった。
 


A 操縦席で始動準備
 (赤文字の機器類は下記コックピットの部参照)

1 原則としてCo-Pilotがチェックリストを読み上げ、Pilotがスイッチやレバーのオン・オフやニュートラルポジションなどをチェック

2 右オーバーヘッドパネルの電圧計で28V以上あることを確認

3 
Propeller control leversをコンスタント(定速)位置にセット

4 
Mixture control leversをフルリッチ(最濃)位置にセット

5 
Throttle leversをアイドルから若干パワー側にセット(個人差あり)

6 
Fuel tank selector切替コックをメインタンク位置にセット

7 bQエンジンにプライマ-(primer呼び水の意味)で少量の燃料を注入

8 外気温に合わせてカウルフラップをフルオープンからフルクローズの間で
Cowl Flaps Handleをを調整する

9 低温時には、オイルディルーション(エンジンオイルクーラーに少量の燃料を混ぜてオイルの粘性を下げ流れやすくする)実施


B パイロットが窓から指2本を突き出して誘導マンに合図 誘導マンが腕を回してエンジンスタート合図


1 オーバーヘッドパネルの縦3本のトグルスイッチ(右図)に指をかける

2 
@ fuel booster pump switchを右に倒す 燃料ブースターポンプ運転開始 昇圧をfuel pressure indicatorで確認

3 
A inatia wheel starter switch右に倒す bQエンジンから電動モーターでイナーシャ円板(フライホイール)をまわすヒューという音が聞こえてくる 
4 30〜40秒で音域が安定してきたら
B engine mesh switchを右に倒す ガツーンという音でメッシュ(クラッチ)が噛みあってプロペラがゆっくりと回転を始める 
 

C 電動モーターの駆動で円板からクラッチを介してプロペラに回転が伝わったら

1 窓からプロペラ先端の回数を数え、8〜9枚(2〜3回転)数えたらー
祈る気持でー中央のignition switchのbQの側をボス位置に回す。うまくいけばドドッドーンと小気味良い音と振動で身震いしながらエンジンがかかる。

2 
oil pressure indicatorを見て、30秒以内に指針が上がらないようなら直ちに燃料をカットしてエンジン停止。止めないとエンジンを焼いてしまう

3 スムースに回転をしていれば
Fuel tank selectorのコックを中立に戻し、Throttle leverをあげて1000〜1200rpmで暖気運転を行う

4 
suction indicator de-icing system presure gageをチェックする

5 同じ要領でbP(左)エンジンの始動を行い、暖機運転が終わると機長と副操縦士で各部の飛行前点検を行い、OKならタキシングの許可を求めて出発である。


2001/02/04 エンジンスタート手順を見て   かつおさんから  

★ インパネの解説に始まり「エンジンスタート手順」大変興味深く拝見しました。このような記事はこれまでに見たことが無く、いろんな資料を基に勝手に想像を巡らせるだけでしたが、航空ファンの私にとっては新しい知識が加わりました。これらを見て痛感することは、現代の航空機がコンピューターへの依存度が非常に高いのに比べ、いかにも「ひこーき野郎」自らの意志と手によって飛ばせている様子が窺え、当時の暖房装置の貧弱な機内に人間性の温もりを強く感じます。

★ 遠い過去のこととなりましたが、地元空港で米軍のC-47を偶然見かけ、友人とともに手が触れるほど近くへ行って見ていたら、バイロットが手招きして機内を見せてくれました。
 
 その時の印象はドア兼タラップから入るとがらんとした空間があり、コックピットまでの床面の傾斜が意外に大きく、急坂道を上る感じだったこと。コ・パイ席に着席して前方を見ても空以外には何も見えず、顔を横窓側にいっぱい寄せると辛うじて前方の一部が見える程度で、これではタキシング時の前方監視は正副の共同作業だなとか、離陸滑走のとき加速して機体が水平になったら俄に視界が開けてほっとするだろうななどといろいろ想像したことでした。 
 
 パイロットに身振り手振りで始動手順を尋ねると「おう、よしよし」とばかりオーバーヘッドパネルに並んだスイッチを「one!(パチン)  Two!(パチン)   three!(パチン)」と唱えながら -パチンはスイッチONの音の表現- ONしたことをはっきり覚えていますが、今回のこのページで自分の記憶の根拠を確認すると同時に、その動作の意味を今になってやっと納得しました。

 大変懇切に説明してくれていたようですが、私は英語が分からず残念でした。計器の表示を読みながら友人に「これは燃料計」とか「温度計」などと説明しているうちにthrottleの表示を見つけ「これがスロットルだ」と言いながら操作の手まねをすると横から「So! throttle! hrottole!」と言い(お前なかなか解るじゃないか)という表情でしばらくペチャクチャ言っていたことでした。

★ 全日空機でしたか、乗客が搭乗を終えドアを引き上げ閉める。エンジンスタートのサインでプロペラがゆっくり回り始める。しかしなかなか始動しない。そのうちに排気管からの生ガスに引火!主翼の後縁よりさらに後ろまでゆらゆらと長く伸びる青みを帯びた帯状の炎。「あーっ!」と思ったがこのことを予想しているかのように下で待機していた係員が特に慌てる風もなく,消火器の長いノズルを排気口に差し込んでシューと一吹きで消火。

★ このページを見ていて空港ではなく「飛行場」だった頃を懐かしく回想しています。

 

 

 
 2008/03/06 日本のダグラスDC-3 技術篇(2002年5月以来休止中)から転記

 

ダグラスDC-3メカニズム 2

コックピットの部
 

 

お断り  極端に言えば1機ごとに仕様が異なっている日本のDC-3、殊にコックピット計器盤は千差万別。一応全日空が羽田に復元したDC-3ノーズセクションに基本を置く。       

 @  航法関係計器
 A  エンジン関係計器
 B  ぺデスタル関係
 C  オーバーヘッドパネル関係
 D 油圧関係の操作レバーなど
 E ワイパー

 

@ 正副操縦士席の航法関係計器

magnetic compass 磁気コンパス 
風防の正面に設置。アルコールの中に浮かぶフロートにコンパスをのせているので、エンジン振動で揺れないように左右のバンジーゴムで下に引張っている。

[古い文献から] ピストンの往復運動で発生する慣性力のうち各シリンダー相互に打ち消しあうもの以上の慣性力を不平衡慣性力と呼び、回転速度の二乗に比例して増加する。これによるエンジンの振動は防ぎようがない。昭和11年航空知識7月号、工学士森山義一氏の論文より

a  barometric altimeter 気圧高度計 
計器の左下に現在気圧をセットするノブがある。電波高度計が普及するまでの一般的な計器であった。  
b  gyro horizon 人工水平儀 
サクション(後述)でジャイロを回転させて機体の傾きを表示する  

c  airspeed indicator 速度計 
見えにくいが文字盤右側にフラップダウン(112mph)や車輪降下(160mph)の許容レンジを示すマークがついている
d  radio magnetic indicator 無線磁方位指示器 
機首下面につけたADFループアンテナとセンスアンテナで受信した地上ビーコン局NDBからの電波で現在位置を表示する
e  gyrosyn compass 
サクションで回転するジャイロが常に地磁気の方向に一致しており、自機の方位を読み取る

f  turn and slip (bank) indicator 旋回計 
人工水平儀と同じ理屈で旋回の角速度を表示し、アルコールに浮かした玉で横滑りを表示する

g  rate of AHimb indicator 昇降計 
1分当りの昇降をフイートで表示する

h  AHock

i  wing flap position indicator  横にメモリがありフラップのUP 4分の1 2分の1 4分の3 Full down(45度)を表示する
 

CO-PILOT NAVIGATION PANEL

a、b、c、e、f、g は正操縦席と同じ。dhは中央側に配置。

j fuel quantity indicator
中央翼左右にメインとサブ計4個のタンクがある。計量はタンク内のフロートに連動して表示する。

A エンジン関係計器

A tacHOME・SITEMAPter マキシマムは2700rpm 
B maniforld air pressure gauge ブースト計 
過給器からの給気圧と標準海面大気圧との差を表示
C oil temperature indicator  ノーマルは60℃から80℃
D cylinder temperature indicator  マキシマムは260℃ 
E carburettor temperature indicator  10℃以下は氷結、50℃以上は過熱
F oil pressure indicator 
65psiから100psiで運用、乗員はエンジンがかかるとすぐにこの計器に目を向けて油圧があがることを確認する。あがらない時は直ちに燃料カット  
G fuel pressure indicator  14psiから18psiで運用
H suction indicator
 
真空ポンプの吸引(サクション)の状態を表示、異常を示すと水平儀などサクション駆動の計器が停止する
I de-icing system presure gage
 
主翼の外翼、水平・垂直尾翼の除氷ブーツへのサクション圧を表示
J temperature 外気温度計

B ぺデスタル関係


 
M Mixture control levers 

P 
Propeller control levers   

T 
Throttle levers  

@A 
Fuel tank selector

 

B Erevetor trim wheel  
機内を人が歩いただけでも重心が変わるので絶えず動かせるように大きな輪になっている。

C 
Ruder trim crank
  Ruder trim indicator

D 
Aileron trim crank
   
Aileron trim indicator

E 
Fuel crossfeed control  
左右の燃料ブースターポンプの一つが故障した時に片方で両エンジンへ供給できるようにする。
       


F 
Tailwheel lock lever 直進のときに尾輪を進行方向にロックしておく

G Parking Brake control knob

C オーバーヘッドパネル関係

パイロット側
機体内外の照明関係のスイッチが並んでいる。赤いガラス玉はエンジン火災警報表示器兼消火ボタンで、同時にプロペラをフエザー位置にして燃料をシャットダウンする機能もある。緊急時はこのボタンだけでエンジンを停止できた。
コパイロット側
縦に配列した3個のスイッチがエンジンスタート用で、右に倒すと右エンジン、左に倒すと左エンジンが始動する。
@ 
fuel booster pump awitch   
A 
inatia wheel starter switch  電動モーターをバッテリー電源で始動し、フライホイールを回転させる。
B 
engine mesh switch  慣性を得たフライホイールをクランク軸に噛み合わせてプロペラをまわし始める.

DC voltmeter バッテリイ電圧は定格30V通常28V以上で運用

 

IGNITION SWITCH
点火スイッチ
engine mesh switchをいれて、プロペラが2回転半ぐらいしたところでこのignition switchをbothに回し、1シリンダーに2個ついているプラグに点火する。

写真は両エンジンともbothに入れた状態になっているが、90度下へ降ろした所がoff、その中間に左右のプラグに別々に入れるポイントがあり、試運転などの時に使用する。

D 油圧関係の操作レバーなど

どうもまずいポンチ絵で申し訳ない。適当な画像がないもので。
客室の方からコックピットを見ていると思っていただきたい。油圧のコントロールパネル(向かって右側)は通路に面している。

Hidraulic Filler Neck、10quarts(2.5gal)入れることができる。

Hidraulic Reservoiるようになっている。

Hidraulic Quantity Sight Gage

Wing Flap Control Lever除しておく。

Landing Gear Control Leverット側にある

Landing Gear Latch Lever尾輪 ステアリングのページを参照

Hidraulic Hand Pump Lever
緊急時または地上でのテストの時に油圧を作動させる。

このほかの油圧関係では、Brake Rudder Pedalsは両操縦席の下、 Cowl Flaps Handle油圧計はコパイ席の右側、 Windshield Wiper Knobはトップ写真のとおり正面窓の下にある。

左右ポンプ切替レバーHidraulic Pump Selector Leverは、オートパイロット(DC-3は初めから装備)の時に油圧系統を切り替えるものだが、日本では自動操縦を使っていなかったので、バルブのレバーは取リはずしていたと思う。

油圧系統の部に詳しく解説

E ワイパー

A ワイパー Windshield Wiper の役割
1 窓の雨滴を取り除くこと

2 窓の氷結防止用に吹き付けているアルコールを均一にならすこと
 

ワイパーは操縦者の視界を確保する大変重要な部品である。タキシングや滑走中は勿論であるが、DC-3運用高度の3000mくらいまでは雨雲もあるので、飛行中も使用するし、冬季は前面ガラスが氷結しないようにアルコールを吹き付けて、ワイパーがこれを平均に行き渡るようにならす役割もあった。

 
図は、
求!ワイパー情報

中央にT字型に見えるのが、アルコールのパイプである。パイプの吹出し口はガラスの下方にあり、出された液体は風圧でガラス面を登っていくわけである。

右の写真は航空技術誌の表紙(2000年12月号使用許可済み)にのった現役のDC−3であるが、アルコール吹出しパイプと思われるものを鼻先に取り付けているところが、いかにもアメリカ的な陽気さを感じる。

コクピットの機長側窓の平面図(上)、正面図(下左)、側面図(下右)のつもりであるが、窓もワイパーも寸法など資料不足のお恥ずかしいスケッチである。

B ワイパーの動力は油

 風圧に負けずに大きな面積を掃くために、DC-3のワイパーは油圧を動力源としwiper converterで左右往復運動へ変換する。
 速さの調節は左右二つの白いノブ windshield wiper knob を回して、バルブの開閉を行なう。